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1日は8760時間になっている!?

こんにちは。NOMLABの吉武です。
最近観た映画をきっかけに、「時間」と「空間」という観点から、idea seedsの場を借りて少し考察とアイデア出しができればと思います。

映画「OLD」

先日、友人におすすめされて、「OLD」という映画を観る機会がありました。「シックス・センス」でも有名なM・ナイト・シャマラン監督の作品です。面白い視点で楽しめる映画なのでご興味があればぜひご覧ください。

映画の内容のネタバレを少しだけ含みますので、もし内容を知りたくない方は下記の※印まで読み飛ばしてください。
映画「OLD」は、とある島の一部の地域で異常なスピードで時間が流れるという現象に巻き込まれた一家の姿を描いた、ちょっぴり恐怖感のある映画です。この映画の中では30分という時間が1年分に相当します。すなわち24時間その場所にいると48年の歳月が経ってしまうということになります。
私はこの映画を見た際に、本映画内の時間経過の考え方は、実は現代を揶揄しているのではないかと感じました。

ここからは映画の内容とは無関係です。

江戸時代と現代

「私たちが1日に受け取る情報量は江戸時代の1年分」という話を聞いたことがあるでしょうか。
時代の変化と共に私たちが受け取る情報量は増え続け、今では江戸時代の365倍もの情報量を私たちは浴び続けていると言われています。
つまり江戸時代を基準に、情報量という観点から考えると、私たちの1日の時間は24時間×365=8760時間になっているという考え方もできるのです。
「1日が48時間だったらいいのに…」
なんて思ったことがある方もいるかもしれませんが、実際はそんなことはとっくに達成しているのかもしれません。

そして近い将来、「私たちが1日に受け取る情報量は令和時代の1年分」と言われる時代が来ていることでしょう。

脳みそパンクするわ!と思った方、実はそんなことはないのかもしれません。なぜなら人間は常に道具を生み出せる生物だからです。

そうAIですよね。
 
昨今ChatGPTを皮切りに生成系AIなど様々なAI領域の技術革新が進んでいます。江戸時代以降、鉄道・飛行機が当たり前に使えるようになり、人間の移動時間が短縮されたことで1日の時間が伸びていきました。同様に、江戸時代に比べて365倍の情報量を浴び続ける現代以降も、人間はAIを当たり前に使えるようになり、思考時間が短縮されることで、まだまだ人間の1日は伸びていくことでしょう。

正確には、時間が伸びているというよりも、生活に存在している、ありとあらゆる無駄が究極的に省かれていくということなのだと思います。目の前に存在する無駄を省き、新たな価値を生み出すというのは人間の性なのでしょう。

現代における「無駄」とは?

さあ、そんなちょっとだけ息苦しい時代、これだけ情報があふれている時代に、省かれていく無駄とは何なのでしょうか。
私は「大衆的な情報」なのではないかと思っています。
テレビのように一般大衆に対して画一的な情報を一様に届けるスタイルはむしろニッチとなり、個人に対して、過去の行動データをもとに、よりニッチに、よりパーソナライズされた情報を届けることがメジャーになってきているのではないでしょうか。
TikTokやNetflixなどAIを積み込んだ多くのツールやサービスが先行して実装しはじめており、当人にとって最適なタイミングで最適な情報が提供され、興味が興味を呼び、無駄なく新たな学びを得ていく時代が到来しています。
今後、情報は益々ニッチになり、興味を持っている人同士が繋がり合い、分散型コミュニティが乱立していくのだと思っています。

空間という媒体におけるパーソナライズとは

では、そんな時代の「空間」とは、どんな姿なのでしょうか。
パーソナライズについて、つらつらと語ってきましたが、空間は本来パーソナライズが難しい、明らかに大衆性が強い媒体です。その場にいるすべての人に同じ体験・情報を届け、コミュニケーションを生み、価値を提供します。

茶室の緊張感、ライブの一体感、自然の解放感、そもそも空間という媒体自体、価値を提供する対象が多人数であり、スマートフォンのように個人ではありません。そのため、一見、提供価値をパーソナライズすることが難しいように見えます。

ですが、本当にそうでしょうか。

その空間に来ている人の年齢は?性別は?
来ている時期は?
来場時は朝?昼?夜?
一緒に来ている人との関係は?
この空間に来ることを決めた要因は?
この空間に求めていることは?

あらかじめ来場者の情報が分かっていれば、当人にとって最高のタイミングで最高の体験価値を届けられるのではないでしょうか。

例えば、とあるミュージアムで日本の近代史を伝えるエリアを作るとしましょう。昭和生まれの方と令和生まれの方では高度経済成長に対する理解度や捉え方は異なっており、興味を持つ情報は異なりますよね。そうすると情報を伝えてあげる順序や届けてあげるべき情報はそれぞれ異なるはずです。もしシアターを用意するなら、あらかじめ映像を3本用意しておいて、来場者属性に応じて映像の内容を変化させてあげた方が伝えたいことが伝わるかもしれません。さらにもしかすると、近い将来、映像を生成するAIというものが誕生すれば、属性分析に応じて、無限通りのシアター映像が生まれるかもしれません。

AI時代の空間の未来を楽しみに

テクノロジーがまだうまく入り切れていない空間という領域だからこそ、実はまだまだ省ける無駄は存在している可能性があります。無駄という表現はあまり良くないですが、ここでいう「無駄」を省くことは、すなわち空間での体験の純度をあげていくことになります。
このAI全盛期の現代だからこそ、来場に至るまでのタッチポイントや空間内のコンテンツ、提供するタイミングを来場者ごとにコントロールができるようになってきており、そんな新しい時代が来ようとしているのではないでしょうか。

空間のパーソナライズに必要な情報を包括的に集めて、情報や体験を提供していくことはまだまだ難しいかもしれませんが、そんなことができるようになれば、より一層空間の価値は向上し、皆様にとってより良い時間を提供できるかもしれません。

1日が8760時間の現代で、無駄なく最高の「空間」で最高の「時間」が過ごせる日を妄想しながら、そんな時代の到来を密かに楽しみにしています。
そしてそんな新しい時代の一端を担っていけると面白いなと考えています。

吉武聡一

デジタルクリエイティブディレクター

空間体験のプランニング、デジタルコンテンツ制作を企画から実装まで一貫して行うディレクター。主な研究開発のテーマは空間におけるデータ活用。乃村が取り組めていない領域で新たな価値・ビジネス創出に挑戦中。

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