
2025年4月、乃村工藝社 歓びと感動学「デザイナーの暗黙知を明文化する実証実験チーム」と「慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科Embodied Media Project (南澤孝太教授)」 が共同で進めてきた研究論文が、国際会議「CHI 2025」のLate-Breaking Work(LBW) Track に採択され、学会発表を行いました。
論文タイトル:Understanding the Floor Experience: A Case Study of the Soft and Hard Floor Material Effect on Subjective Impression of the Exhibited Objects
著者: Burcu Nimet Dumlu, Kiryu Tsujita, Takatoshi Yoshida, Arata Horie, Tatsuya Saito, Yuh Yoshie, Kiyotaka Tani, Hisaaki Yokoyama, Keita Aono, Kouta Minamizawa
本プロジェクトは、我々がこれまで空間デザインの実践において、天井・壁・床といった空間要素を多角的にデザインしてきた中で、今まで暗黙知として扱われてきた「歓びと感動」の感覚を、学術的・科学的手法によって解明・言語化することを目的としたものです。
今回の研究では、特に「床面」に着目。
床面は、日常生活において人が常に接している面であり、空間との最も直接的な接点です。そのため、空間デザインにおいてもその見た目や踏み心地は重要なデザイン対象とされてきましたが、床のもつ触覚的感覚が身体や認知に及ぼす影響については、十分に分析されてきませんでした。
そこで、我々は、作品鑑賞という繊細な認知行動を対象に、床面の触覚的な質感が人の印象評価にどのような影響を与えるかを実証実験によって検証を行い、身体的な感覚と認知の関係性を科学的に分析することで、空間デザインの新たな評価軸を提示しました。
この研究成果は、空間体験における「歓び」や「感動」をより高精度にデザインするための基盤となるものであり、今後の空間創造における指針となることが期待されます。
■学会詳細
学会:The ACM CHI conference on Human Factors in Computing Systems
開催日:2025年4月26日~5月1日
開催場所:パシフィコ横浜、日本
論文URL:https://dl.acm.org/doi/10.1145/3706599.3720112

谷 清鳳
デザイナー
主に企業のコミュニケーションデザインに関わる空間のデザインに携わってきました。
特に自然科学やデジタルコンテンツを内包するような体験のデザインが得意分野です。アナログな手法とテクノロジーを境界なくデザインしたいと思っています。

今井 健人
プランナー/エンジニア
専門である認知科学とメディアアートを土台に様々な媒体で創作活動を行う|万人へ錯覚を促す恣意的な空間体験づくりに取り組む|SIGGRAPH ASIA 2022 Best XR Content Award, 第0回 Tech Direction Awardsなど受賞。

吉江 優
デザイナー
グラフィックからプロダクト、空間デザインまでを等価な視線で、そのとき求められているものは何かを常に考え、幅広く提案することを心掛けています。最近はリブランディングに伴う店舗デザインや大規模商業施設、プロダクトデザインの仕事に多く取り組んでいます。

中谷 唯和
デザイナー
2023年入社、同年no.10所属。大学で建築学を専攻し、空間の持つ魅力に気づきました。琴線にふれる空間を届けたいです。

菅谷 翔
アカウント
商業、ホテル、企業ブランディング等多岐に渡る空間づくりに従事。
現在は、ホテル・ラグジュアリーブランド市場を牽引。
関係者の個性を束ね、その先にある歓びと感動体験を創出しています。

青野 恵太
「歓びと感動学」リーダー
未来創造研究所「歓びと感動学」のリーダーをしつつ、クリエイティブチーム「no.10」の代表も務めています。「本質的なものとはなにか?」ということを日々、自問自答しながら、「モノゴトの始まりから終わりまでを大切にすること」をモットーに空間創りに取り組んでいます。